取引停止は突然やってくる!セキュリティ対策評価制度を知らない企業が失うもの
05.04.2026
NEWTREND
まず押さえておきたいポイント
「セキュリティ対策はやっていますか?」この一言で、商談の空気が変わる
商談の場でこの一文が出た瞬間、空気が変わることがあります。製造業でも建設業でも、士業でも医療法人でも。IT企業だけの話ではありません。
警察庁の調査によると、2025年のランサムウェア被害報告件数は226件。被害組織の約6割が中小企業です。
引用:警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
「うちは小さいから狙われない」。その前提は、もう通用しません。対策が手薄なところほど狙われます。
取引停止は"事故の後"だけで起きるわけじゃない
問題はサイバー攻撃だけではありません。
サプライチェーンが複雑化した今、大企業は「取引先の対策状況」を確認せざるを得なくなっています。自社がどれだけ万全でも、取引先が突破口になれば意味がないからです。
その結果、入札要件や取引基本契約書に「セキュリティ対策確認」が盛り込まれるケースが増えています。
IPAが推進する「SECURITY ACTION」は任意の制度です。しかし実態として、これが信用の前提条件になりつつあります。
では、実際に被害に遭うとどうなるか。被害総額(調査・復旧・身代金を含む)は1,000万〜5,000万円未満が最多で、1億〜10億円に達したケースも15.6%あります。しかも、身代金を支払っても復旧に失敗した割合は25.6%。4社に1社以上が、払い損になっているのが実態です。
まず"この順番"で動いてみてください
難しく考えすぎないことが大事です。全部を一度にやろうとすると止まります。まずはこの流れで進めてみてください。
STEP 1:情報資産の「棚卸し」から始める
「何を守るべきか」がわからないと、対策のしようがありません。最初にやることは、自社にどんな情報があるかを書き出すことです。
- 顧客リスト・見積書・契約書はどこに保存されているか
- 社内システムのアカウント情報は誰が管理しているか
- クラウドサービス(Google Workspace、freee、kintoneなど)の利用状況
Excelでいいので、「情報の種類・保存場所・アクセスできる人」の3列で一覧を作るだけで、リスクの輪郭が一気に見えてきます。
STEP 2:アクセス権限を「現在地」に合わせて整理する
棚卸しが終わったら、次は「誰が何にアクセスできるか」を見直します。ここは多くの企業で放置されがちな部分です。
よくある問題をそのまま挙げます。
- 退職した社員のアカウントが残ったまま
- 全員が管理者権限になっている
- 共有パスワードを何年も変えていない
- 外部パートナーに広すぎる権限を与えている
ランサムウェアの侵入経路としてVPNやリモートデスクトップ用機器が8割を占めており、その主な原因は脆弱なID・パスワードや不要なアカウントの管理不備です。一つひとつは小さく見えても、組み合わさると侵入経路になります。
引用:警察庁「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
STEP 3:バックアップの「保存先」と「頻度」を確認する
ランサムウェアは、ファイルを暗号化して身代金を要求してきます。このとき、バックアップがあるかどうかで対応がまったく変わります。
ただし注意点があります。バックアップが「同じネットワーク上にある」だけでは意味がありません。感染が広がれば、バックアップも道連れになります。
確認してほしいポイントはシンプルです。
- バックアップ先がクラウドのみ、または社内NASのみに偏っていないか
- 最後にバックアップが正常に完了したのはいつか
- バックアップから実際に復元できるか、試したことがあるか
「取ってある」と「使える状態にある」は別物です。身代金を支払わずに自力で1か月以内に復旧できた企業が6割を超えている一方、長期間かけても復旧できずに作業を終えた企業もあります。その差は、バックアップ体制の質にあります。
STEP 4:社員の「使っているツール」を把握する
生成AIの普及で、新しいリスクが加わっています。ChatGPTやその他の生成AIに、社員が無意識に顧客情報や社内資料の内容を入力してしまうケースが増えています。
悪意はなくても、情報漏えいは起きます。
まずは「社員が業務でどんなクラウドサービスや生成AIを使っているか」を把握することが先決です。把握できたら、「これは使ってよい・これは使う前に確認」という簡単なルールを一枚紙でまとめて共有するだけでも、リスクは大きく変わります。
STEP 5:SECURITY ACTIONに宣言する
STEP 1〜4が整ってきたら、IPAの「SECURITY ACTION」に宣言することをおすすめします。
これは社内の取り組みを対外的に示す制度で、★1つ星と★2つ星があります。まずは★1つ星(5分程度でできる自己宣言)から始めるだけでも、取引先への説明材料になります。
入札要件や取引先アンケートで聞かれたとき、「宣言済みです」と言えるかどうかは、小さいようで大きな差です。
それでも、これだけでは終わりません
ここまで紹介したのは、あくまで「まず動き出すための入口」です。
実際には、インシデント対応の手順を整備する、社員教育の仕組みをつくる、外部からの脆弱性を定期的に診断する。やるべきことはまだあります。全部を一度にやる必要はありませんが、優先順位を間違えると、抜け穴が残ります。
